「奇数先!」

よく晴れた、穏やかで温かな木陰の一角。
変哲もないこの場に盤を挟んで二人。
張らずとも通る、南斗星君の声。



I go , We Waiting ・・・  




北斗星君は碁盤上に伏せた手をそっと引いた。
盤上に残った二つの白石。
偶数個が残るそれは、南斗星君の敗北を示していた。

「私が先行だな」
「外れましたかぁ……さいさき、わるいなぁ、もう」

黒い石のはいった碁笥を北斗星君は手に取る。
南斗星君はぶつくさと言いながらももう片方のそれを手に取り、
碁盤上にある石を戻しながら自分の隣に置いた。
次に、北斗星君に目を向ける。

「まあ、いいか。後手からひっくり返すほうが、勝った気がしますしね」

明らかな挑発への応戦はふっと鼻で笑ったのみ。北斗星君は初手を打つ。
それでも気にせず、南斗星君は碁盤に視線を移して呟いた。

「それに、この状態で勝てば、なにかいいことが起こりそうな気がします」

今度は南斗星君が白石を置く。
交互に盤上に布石を張りながら、牽制し合いながら、徐々に盤に石を散らせて行く。

「私とて、負ける気はしていないが」

北斗星君の声と同時。

じゃり。
砂を踏む音と少女の声が、響いた。

「北斗様! 南斗様!」

声の先へと二人は目を向ける。
南斗星君の顔は見るからに綻び、北斗星君の口元が少しだけ緩んだ。

「終局を待たずとも『いいこと』は起こったようだ」
「あなたに言われると少々不本意ですが、そのようですねぇ」



『また、来てくれますか?』
別れ際の些細で重大な約束を果たすため、彼らを訪ねてきた花梨の姿であった。



「よくぞ参られた」
「いらっしゃい。お待ちしていましたよ」



彼女に投げれられた両者の歓迎の声。
変哲もない場には彩りを添えて、盤を挟んで二人と一人。
よく晴れた、穏やかで温かな木陰の一角。







END

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花梨ちゃんEDの碁でどうして南斗君が白番なのかがどうしても気になってできたお話です。
囲碁、内容は・・・間違ってないと、思います。はい。
北斗と南斗のやりとりがすごく好きです。


(2009/03/13 星君祭・作品展示)